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2025.06.30東京
授業/特別講師/講演会
鎧塚俊彦シェフ「今日使うチョコレートは、エクアドルの自社管理農園『Yoroizuka FarmEcuador』で生産されています。
畑からチョコレートを作るパティスリーというのは、世界初の取り組みだと思います。
カカオを現地で発酵乾燥させたものを日本に送り、『一夜城 Yoroizuka Farm』で加工しています。
カカオ豆のローストは、一般的に 40 分ほど行うことが多いですが、『ECUADOR 5min』(80%)のロースト時間は、5 分だけ。エクアドルショコラが本来持つ味わいを忠実に表現しています。
皆さんが思い浮かべるチョコレートには焙煎香があると思いますが、また違ったフレイバーにアプローチしたかったんです。
『ECUADOR 5min』は、やんちゃで荒々しい味わいが特徴です」
今回は、5 月上旬に実施された、レコールバンタン最高峰コース・グランパティシエ専攻、鎧塚俊彦シェフによる授業をレポートします!
【1. 「Farm to Table」農園からテーブルまで】
調理するのは、「Tarte chocolat Equateur(タルト・ショコラ・エクアトゥール)」。「エクアドル産チョコレートのタルト」です!
レシピはフランス語で書かれていて、在校生(以下メンバーと表記)のみの公開となりますが、少しだけ調理風景をシェアします。
鎧塚シェフ「このレシピには、メレンゲが入っているから軽いタイプです。タルトショコラにも色々な配合があります。
チョコレートを合わせるときの温度も非常に大切です。調理する季節、その日の温度、湿度、原料の状態によっても変わるので、“感覚”を覚えてください」
【2. 鎧塚講師のデモンストレーションを見て学び、実践!】
<アパレイユ ショコラを仕込む>
アパレイユ(appareil)とは:流動状の生地のこと。 卵やバター、小麦粉など数種類の材料を混ぜ合わせたものを指します。
レコールバンタンでは、プロ講師のデモンストレーションを見て学んでから、一人一製品を調理します。だから、効率的に技術が身につきます。
【3. 鎧塚シェフ自身のキャリアを振り返って。海外研修へのアドバイス!】
鎧塚シェフ「将来、日本で勝負したいなら日本で経験を積んだほうがいいです。僕は、29 歳で渡欧しました。
当時、30 歳になったら行けない気がしていましたが、今となっては、年齢は関係ありませんでした。
日本で、飴細工、チョコレート、焼菓子、生菓子、何を作っても負けないくらいの自信をつけて学びに行ってもいいんじゃないかなと思います」
2000 年 ベルギーの当時三ツ星レストラン “ブリュノウ"に移籍。半年後正式にシェフ・パティシエに就任。
鎧塚シェフ「ジャンピエール・ブリュノウは、鬼才です。料理に対するパッションがものすごい人でした。
スタッフがミスをすると、親父(ブリュノウ氏)が怒り、現場にはものすごい緊張感が走りました。
だから、働くスタッフはものすごく真剣でした。弟子入りしたいと来る日本人シェフは、大抵は親父から見えない死角で作業をするそうです。
親父から見えないところで仕事をする人は、ジャガイモを剥いたりして、花形である“火口”での調理にあがってこないんです。なので、わたしは、シェフの目の前で仕事をすることを心がけました。
ときには同僚に「ここをあけてくれ」と言って、スペースを確保することもありました。そうしたことを積み重ねて、『お菓子は、Toshi のほうができる』と認めてくれました。
この中で、パリ研修*に行く人はいますか?」
4 割くらいのメンバーが挙手しました。
鎧塚シェフ「日本以外の国でお店を開業したいのなら、早く現地に行って慣れた方がいいです。ですが、パリに行くこと自体で夢が叶っているわけではありません。
ずっと日本にいても立派なパティシエになれます。“ピンチ”と、“チャンス”は表裏一体です。
僕らの師匠の時代は、半ば不法滞在のような形で修行に行く人もいました。行くことそのものが“ピンチ”だったんです。だからこそ、“チャンス”でした。
いま、フランスはワーキングホリデー制度があります。誰でも行ける時代はチャンスにも見えますが、もしかするとピンチかもしれません」
とメッセージ。
そして、4 つに均等に分けられるように飾る実用的な「ドイツ飾り」と、芸術性を追求し分割に重きを置かない「フランス飾り」、2 種類の異なるデコレーションを実践。
鎧塚シェフ「ドイツ飾りの特徴は、必ず何人で分けるのかを聞き、等分できるようにします。
対してフランス飾りはチョコレートのフリルをあしらうなど、非常に“オシャレ”です。
これは、文化の違いで、それぞれに良さが表れています。そうした文化の違いを理解してください」と解説。
グラン・パティシエ専攻メンバーは、毎年「トシ・ヨロイヅカ」にバレンタイン商品を提案
しています。<https://www.lecole.jp/topics/blog/detail/4803.php>
今回の授業は、バレンタイン商品提案に向けた導入授業の役割も果たしています。
鎧塚シェフ「2025 年で、産学協同プロジェクトは 4 年目を迎えます。
必ずメンバーが提案したスイーツを商品化し、販売しています。在校生自身が企画提案して、販売するのですが、大きな反響をいただくこともあれば、思ったよりも売れないこともあります。
お菓子屋さんで『美味しいお菓子をつくればいい』と思うのは三流、『美味しいお菓子をつくり、売れたらいい』と思うのは二流、『美味しいお菓子をつくり、売れて、お客さまにまた来ていただける』というところまでを描けるのが一流です。
僕もまだまだですが、弟子たちと一緒に努力しています」
――― なるほど。鎧塚シェフが考える、パティシエとして求められるのは、どのような人材ですか?
「まず、真面目で素直な人です。仲間から信頼される子で、美味しいお菓子が作れない人は一人もいません。逆はあります。お菓子をつくる才能があっても、サービスできっちりとできない人はいいお菓子ができません。
いまの若い人は短いスパンで考えがちです。3 年、4年という期間だと、要領がいい子が伸びるかもしれません。しかし職人の人生は長いもの。
私は 60 才になりますが、諸先輩方から見ればまだ“小僧”です。
以前、あるシェフから『ウチで 4 年間働いていたパティシエが、鎧塚シェフのお店で働きたいと言っています。入れていただけませんか?』と、お電話をいただきました。
『ぜひ、来てください』と即答しました。シェフ自ら連絡をしてくれるというのは、その人がちゃんと働いてきた証、いわばお墨付きです。
ご縁というのは、まるで雪だるまのようにゴロゴロと転がり大きくなっていくもの。ぜひ、ご縁を大事にして、菓子屋としての経験を大きくしていってください!」とメッセージ。
授業を受けたメンバーに感想を聞きました。
岩崎さん「生クリームのたて方、メレンゲのたて方が難しかったです。以前の授業で、スフレを調理したときもメレンゲのたて具合をつかむのに時間がかかりました。
鎧塚シェフがおっしゃるように“感覚で”わかるように練習します」
柴野さん「チョコレートの温度管理が難しかったです。将来はショコラティエになりたいので、実践的な内容だったと思います!」
業界をリードするプロフェッショナルから指導を直接受け、鎧塚シェフに質問ができるのは、グラン・パティシエ専攻だからこその特別な環境です!
*=2 年次と 2.5 年次に 40 日間または 80 日間、スイーツの中心地・パリにホームステイして学ぶプログラム。
現場パティスリーでの研修や経験を通し、感性豊かなパティシエを育成します。